スキルス胃がんだったとは!

夫がスキルス胃がんステージ4の告知を受けてからのこと

胃がんとは別の胃の不調

闘病ブログは更新がないと生きているのかどうかわからなくて不安になりますよね。おかげさまで生きています。しかし記憶はおぼろげなので闘病ブログとしては参考になることが少ないかもしれない。きちん、きちんと経過を記録される方々を尊敬する。

 

今回はがん治療中の不調ががんのせいかどうかわからないという不安と、それにどう対処したかを書く。

 

さて、前回の入院のあとにもう一度入院してシスプラチンを打った。これで3クール目になるはずだ。2クール目のあとに水を飲んでも苦しがるような時期があり、一昨年の告知のときのような、つまり胃の内部をがんが圧迫して水さえ吐いてしまうような状態にあるのかと不安になった。

 

やはり去年胃切除手術をした方がよかったのではないか、シスプラチンは効果を上げていないのではないか、温泉にいくのをやめたから、夜更かしと食生活が、とあれこれ気を揉む。しかし揉んだところでどうにもならない。こういうときはブログが書けない。つまりこうしてブログを書いているいま、夫の容態は安定している。結果からいえばシスプラチンは効果を上げていた。がんとは別に胃の不調が問題だったようで、百草丸を再開してから少しずつ調子がよくなってきている。少し順を追って書いてみようと思う。

 

夫の容態は年末年始でまずまず安定していた。苦しむようになったのは1月末に入ってからだ。わたしたちは先月遠方から来客を迎え、近隣を案内した。夫は家にいるといっていたが、直前で一緒にいくことになった。夫は行くとなったらとことんサービスする性分で、道中車の運転を一手に引き受け、寒い中あちらこちらへ出向いてまわった。そしてその足で鹿児島へいった。福岡から鹿児島までは車でおよそ4時間。鹿児島では一泊して、がんで他界した知人の家族を訪ねた。長距離運転に加えてそのダメージがとても大きかった。

 

翌日からがくんと容態が悪くなった。食べるとすぐに胃が苦しくなるので食べられない。数日前に一人前の食事をとれていたのが嘘のようだ。プールに通っていたなんて夢のようだ。元気が出ないだけではなく、夜な夜な身悶えして苦しみ、苛立ち、暴言が増えた。希望が持てないと自制心を頼みに健康的な暮らしを維持するのは難しく、勢い自暴自棄で刹那的な暮らしになる。

 

いちばん苦しいのは食事のあと胃の中に発生するガスが胃壁を圧迫することだ。胃の内部が狭まっているせいか、ガスはなかなかげっぷやおならとして出てこない。夫は食事のたびにガスで腹部や背中に痛みを覚え、何時間も身体を捻って悶絶するようになった。とくに深夜から夜明けまでがひどい。眠ろうとすると夫が唸り声をあげて身を起こすのでわたしも眠ってはいられない。背中をさすり、お腹に手を当て、声をかける。昼夜逆転が続く。

 

通院検査の日、久しぶりにあの「命は人の手を離れたところにある」という気持ちになった。夫の選択はどこかで間違ってしまったのかもしれない。しかし修正する機会が目の前にあっても、夫がそれを選ぶかどうかはわたしの手に負えない問題だ。何を食べ、何を飲み、どう暮らすか、どんな治療を受けるか、それを決めるのは夫だ。わたしはただ夫の望みを支援し、わたしが望む結果ではなく、夫が納得のいく結果を見るのを見届けるしかない。寒い待合室でわたしの肩にもたれて眠る夫の眉根を寄せた顔を見ながらそう思った。

 

しかし我々の覚悟に反して検査の結果は悪くなかった。医師は夫の不調の訴えに困惑気味ですらあった。少なくとも進行している様子はない。むしろ前回より各種の数値はよい。どうやら胃がんとは別に胃の不調が問題の引き金になっているらしかった。要するに悩みと不健康な暮らしが問題を悪化させていたのだった。

 

わたしたちはキツネにつままれたような気持ちで病院をあとにした。後に夫が最近御岳百草丸を飲んでいなかったことがわかり、再開した。またアスパラギンに関する記事を読み、高温で加熱された小麦のアスパラギン含有量に驚かされ、何度目かの「パンは止めよう」という決意を新たにした。

がん進行・転移に食品が影響か=英研究 - BBCニュース

 

夫はパンを食べるたびに特に激しい痛みと苦しみに襲われ、「小麦は胃と腸の中で粘る」「小麦を食べるとガスが発生して苦しい」と常々いっていたのだけれど、食べるときの誘惑の大きさにはっきりパンを避ける決心がつかなかった。告知後半年間のストイックな暮らしに戻れたらと思うけれど、去年のいまごろ完全に無治療でいたあいだにすっかり気が緩んでしまった。生活習慣病は生活習慣を改めることが難しいからこそ難病なのだと思う。

 

わたしは夫が炭水化物をとるたびに不安で、パンや麺類など小麦食品を食べたがるのを見るたび絶望的な気分になっていた。しかしアスパラギン含有量を調べ、高温で加熱された小麦は低温で調理されたものより含有量が高いこと、砂糖はパンと比べて含有量が低いことなどを知り、少し考えを改めた。小麦を高温で調理したもの、つまりパンや焼き菓子は極力避ける。麺類と糖質は控える。

 

夫はいまも食事をとるのを怖がる。お腹が減るのはつらいけれど、食べた後に七転八倒するのが怖いからだ。それでも少しずつ状態はよくなっている。小康状態を保って、家で人間らしい暮らしをしている。何より七転八倒するような痛みと苦しみは胃そのものの不調と構造の問題で、がんによる激痛ではないとわかったことは大きい。

 

この塊は腫瘍かもしれない、この不調はがんが悪化したのかもしれない、今後いっそうひどくなると思うのはとても怖い。そうでないとわかれば手の打ちようもある。不安に飲み込まれてしまわないようにしたい。