スキルス胃がんだったとは!

夫がスキルス胃がんステージ4の告知を受けてからのこと

再発

昨日は3ヵ月に一度の胃カメラとCT検査、月に一度の血液検査の日。夫の胃がんが進行しているかもしれないという診断を受けた。

 

重なる時は重なるもので、同日関西の祖母が脳梗塞で倒れたという知らせもあり、わたしは目下の懸念事項だった複数の仕事を終えて次の締め切りに入ったところだった。

 

昨日福岡は雨だった。駐車場から正面玄関は遠かったので、夫は入退院用の出入り口を通って院内に入ろうとした。わたしはこの出入り口が嫌い。入院中の夫を見舞いに通った通路からだ。少し歩いても正面入り口から入りたい。

 

「え!いやなの? 何でもないよ。結果を聞きに行くだけだから」

夫は最近完全に油断していた。タンパク質とビタミン補給に作っていたシェイクは冬の間飲まず、毎日続けていたコーヒーエネマは週に1度から10日に1度に、2時間置きに飲んでいたリボゾームビタミンCも8時間に1錠になり、一日置きに通っていた温泉にもずいぶん長い間いっていない。

 

人と食事をすると「糖質制限をしているので」と断りを入れるけれど、徹底してに避けていた小麦製品、コンビニスイーツなどを茶目っ気たっぷりに妻の顔色をうかがいながら食べ、ご飯も普通に食べている。わたしがゆるすかどうかの問題ではないのだけれど、見つかると怒られるから機嫌を取っておこう、という調子。

 

ついに見かねて「糖質制限、してないじゃない」といったところ、すっかりヘソを曲げ「俺は我慢してた、でもも糖質制限はやめる」と当てつけのように麺類やパン、小麦製菓を食べ始めた。

 

要するに夫はここ数か月で発病する前の暮らしにすっかり戻った。寒い部屋で薄着をして深夜まで何か作業をする。床で寝る。「寒い、寒い」と言いながら窮屈だからと厚着をしない。

 

それでも血液検査の結果はいつもよかった。遊び呆けてテストを受けた学生が結果を聞きに行くように、夫は12月頃まではビクビクしながら検査にいったが、何をやっても腫瘍マーカーが上がらないので本当にもう治ったのだと考え始めていた。

 

「今回、胃カメラの結果に、少しまた、大きくなり始めているという所見がありました」

R医師ははじめて会ったときのような緊張した面持ちでそういった。

「CTと血液検査には異常ありません。転移も見られませんし、胃の壁も厚くなってはいません。数値はむしろよくなっているんです。でも、ここに」

R医師はディスプレイに映る3ヶ月前の胃壁と今月の胃壁を指さした。

「この、少し凹んだところ、わかりますか。ここの周りが、今月少し盛り上がってきている。お薬で抑えていたガンが、少しずつ大きくなってきているのだと思います」

 

化学療法をやめたのは去年の6月。かれこれ10ヵ月のあいだ抗がん剤が効き続けていたとは考え難い。わたしたちはこの3ヵ月の暮らしの変化を思い返さずにはいられなかった。

 

このブログを中断していた理由のひとつは、あの頃の出来事は思い出せても恐怖と不安を思い出せないでいるせいもあった。思い出すとあの頃が戻ってくるようで怖くもあった。現在と切り離しておかないと危ないと、どこかで思っていた。でもその恐怖と不安は一瞬で戻ってきた。ああ、こうだった。こんな感じだった。いま書いておかないと、また忘れてしまうだろうと思った。

 


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